『大阪から日本は変わる 中央集権打破への突破口』

大阪都構想2.0』につづいて、『大阪から日本は変わる 中央集権打破への突破口』(吉村洋文 松井一郎 上山信一朝日新聞出版)も読んでみた。

 内容のほとんどが、「府市一体で迅速に対応したコロナ対策」、「維新統治以前の大阪のダメダメぶり(いびつな労使、既得権益、公務員の厚遇)」、「維新改革の成果」、「維新結党の経緯、吉村洋文の政界入りの経緯」などで占められ、残念ながら目新しいことはさほど書かれていない。 

 

最終章の「国家戦略とは別に『大都市戦略』が必要」という部分のみ、少し興味を引く。以下に一部を引用する。

 

 「大都市とは、いわばジェットコースターみたいなもので、上がったり沈んだりが大きい。国よりも早く変化に対応しなければなりません。国家のマネジメントはもっとゆっくりしています。」

「つまり、国と大都市ではマネジメントのスピード感がぜんぜん違います。産業にたとえると、農業とハイテクくらい違います。国家は春夏秋冬、5カ年計画で回せます。しかし、大都市は日進月歩でやっていかなければならないのです。」

 「大都市はリスクもリターンも大きい。だからこそ、いわゆるアジリティ(機敏さ)、スピード感が非常に大事なのです。大阪維新の会が国から地方、特に大都市自治体への『権限委譲』を強く訴える理由は、まさにこれなのです。」

 「いまの日本では、国のさじ加減一つで財源が地方に行ったり行かなかったりします。政治的な要素もからんで都市と地方の間の富の再配分が決まるわけです。そういう構造はおかしいと思います。

これは地方自治に関わる本質的な問題だと思います。」

 「これからは大都市の成長を考えることが結局は国をトータルで栄えさせることになります。大都市の成長戦略を支えるかたち、国の政策を柔軟化させる方向に日本も早く転換すべきです。そのためにはとにかくガチガチの中央集権と全国一律の制度を変えなければなりません。

大阪維新の会が「道州制」を提案しているのも、こうした理由からなのです。」

 

以上が、大都市自治体への権限委譲と道州制を訴える維新の言い分である。

「なるほどなー」と思える部分と、そうでない部分とがある。

 

国際競争に打ち勝つ競争力のある大都市づくりは、日本の凋落を食い止めるためにも不可欠である。ここは大いに賛同できる。ただし、地方への権限委譲には慎重でなければならない。

 

現在、外国からの移民が増え続ける自治体が日本に数多く存在する。そして、実質的な外国人参政権を与えかねない「自治基本条例+住民投票条例」を制定している自治体も増加傾向にある。

移民勢力に対してガードの緩いこうした自治体に権限を与えれば、取り返しのつかないことになりかねない。

 

さらに、日本維新の会憲法改正案には、「法律に優位した条例〔優先条例〕を制定」する権利を自治体に認める条文が記されている。

 これは自治体に「国からの独立」を許し、日本を内部から崩壊させることを可能にする恐ろしいものだ。

地方自治の強化と権限委譲の危険性をしっかりと認識すべきである。


 

 


発売日: 2020/09/11
メディア: Kindle