2022年1月29日(土)奈良春日野国際フォーラム 甍~I.RA.KA~
なんか、めちゃくちゃ久しぶり!
奈良を訪れたのは、3年くらい前に奈良豆比古神社の翁舞を観て以来だと思う。
この日はシカさんが多くて、テンション上がる~⇧
かわいい~❤
オミクロン株が全国的に猛威を振るっている時期だから観光客は少なめ。
人間よりもシカさんのほうが多かったくらい。
おろしたての草履だったので、道を歩くときは、黒豆ふんふんを踏んずけないように注意しながら。。。
シカさんたちを愛でながら進んでいくと、見えてきた!
はじめて訪れる奈良春日野国際フォーラム 甍~I.RA.KA。
借景になっている若草山は、この一週間前に若草山焼きを終えたばかり。
その若草山と共鳴するように、天平時代を彷彿させるなだらかな大屋根「甍」。
大和の風景らしい、ゆったりとした、おおらかな佇まい。
なかの能楽堂はこんな感じ。
感染対策としてこの日は収容人数500人の半分で満席になるように設定され、席は市松模様に座るシステム。
年配の方々はコロナ感染を怖がって外出を控えるからガラガラだろうな~と思っていたけれど、けっこう席は埋まっていました。
正月の《翁》につきものの注連縄が張られていないのがちょっと残念💦
以下は、この日のプログラムと簡単な感想です。
解説 齋藤信輔
《翁 烏帽子之祝儀》翁 大槻文藏
三番叟 野村又三郎 千歳 寺澤拓海 面箱持 野村信朗
笛 貞光智宣
小鼓 大倉源次郎 荒木建作 上田敦史
大鼓 森山泰幸
後見 赤松禎友 大槻裕一
狂言後見 野口隆行 藤波徹
地謡 齋藤信隆 寺澤幸祐 武富康之 井戸良祐 齋藤信輔 林本大
舞囃子《屋島》 シテ 寺澤幸祐
笛 貞光訓義 小鼓 久田陽春子 大鼓 守家由訓
地謡 井戸良祐 林本大 上野雄介 稲本幹汰
【感想】
解説では、橋掛かりの歩き方についてのお話が面白かった。
通常の能の演目では、橋掛かりを歩く際、真ん中を避けて左側通行になるが、《翁》は特別なので、橋掛かりの中央を歩くとのこと。
神社の参拝でも、参道の真ん中は神さまの通り道なので、参拝者は真ん中を避けて左側を歩くようになっているけれど、橋掛かりの歩き方も同じような宗教思想が背景にあるのかな?
翁(翁面)=神さまなので中央を歩くことが許される、ということなのかも。
橋掛かりの歩き方ひとつをとっても、《翁》は特別で、厳粛な神事なんだな~と改めて気づかされる。
《翁 烏帽子之祝儀》
小書「烏帽子之祝儀」は、揉之段のあと、三番叟と面箱持ちが、翁・千歳と囃子方・三番叟がそれぞれ着けている烏帽子の名前について問答を交わすというもの。
三番叟が「翁の太夫殿の烏帽子はどうか?」と尋ねると、面箱が「立烏帽子」と答え、「囃子方衆の烏帽子は?」と尋ねれば「折烏帽子」と答える。
三番叟は、いずれもめでたい名なので祝って参らせようと言って、面箱から錫を受け取り、鈴之段に入っていく。
大槻文蔵のシテを拝見するのは何年ぶりだろう。
足腰はやや衰えたようだが、樹齢を経た老木のような風格が翁の役にぴたりと合って、まるで翁面をつける前から翁の神が降臨していたかような神々しさ。
どこか悲しげな白式尉の雰囲気と大槻文蔵の芸格が引き合い、お互いがお互いのなかに吸い込まれ、みごとに一体化していた。
そして、源次郎さんの翁の鼓を聴けたことが何よりもうれしく、懐かしかった。
長く尾を引き、かすれていく掛け声が、大和の地の空気のなかで震え、鼓膜のなかに沁み込んでくる。
身体で感じる鼓の音と魂の気迫。
いにしえの音を身体で感じる心地よさ。
身体で覚える舞台の記憶。
幸せな時間と空間だった。
能楽堂のロビーから眺めた庭園。