2023年9月23日(土)
みんぱくを訪れたのは学生時代以来なので、ほんとうに久しぶり。
はじめて訪れたような新鮮な気持ちで鑑賞できました。
(たぶん展示内容も、昔とはずいぶん変わったんじゃないかな?)
展示室に入ると、巨大なモアイ像が出迎えてくれます。
各展示はオセアニア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、西アジア、音楽、東南アジア、南アジア、中央・北アジア、中国、朝鮮半島、日本エリアにそれぞれ分かれていて、観てまわるだけでプチ世界旅行をしているようなワクワク気分を味わえます♪
インカ帝国の古代遺跡を思わせる中庭。
館内は基本的に撮影OKだったので、気になった展示物を以下にご紹介します。
アステカ文明(16世紀初め)の暦石のレプリカ。
解説によると、トラルテクトリ(大地の怪物)を中心に、これまでに滅んだ4つの太陽(時代)と、5番目の太陽である現生の終末の日が描かれ、その周りに260日暦やシウコアトル(火の神)などが配置されて、アステカの世界観の一端が示されているそうです。
日本の神話では太陽は唯一無二の存在ですが、古代中国やアステカなど、他の文明では太陽が複数存在する神話体系がけっこうあるんですね。
メキシコの民間信仰では、動物に変身する能力を持った人や、人を守る動物霊を「ナワル」と呼ぶそうです。
なんとなく「もののけ姫」のシシ神に似ている気がしますが、こうした南米の神話からモチーフを取ったのかもしれませんね。
こちらはオーストリア・チロル地方のカーニヴァルの仮面と衣装。
「冬」を象徴する男性的なシェラーと「春」をあらわす女性的なローラーが、大晦日に村の家々を訪れてよい年を願う「日本のなまはげ」のような行事のようです。
ヨーロッパもキリスト教化される前は多神教文化だったので、習俗や民間信仰など日本と似ているところが多いですよね。
バロンは、悪霊がもたらす災いから人々を守るとされる聖獣で、特にあご髭に強い力があると考えられています。
悪霊を祓う演劇などに登場するそうですが、日本の獅子舞のようなものかな?
こちらはバロンの側面ですが、こんなふうに日本の二人立ち獅子舞のように2人がかりで演じるようです。
調べてみると、獅子舞は1世紀ごろの中国後漢で発祥したという説があり(諸説あり)、そこから日本を始めアジア各地に広がっていったのかもしれませんね。
ガムランの体験コーナーもあって、やってみると、めっちゃ面白かった!
ガムランを演奏しているビデオに合わせてゴングやカジャールなどの楽器を鳴らすのですが、音の響きが鼓膜や腕からダイレクトに伝わって、ガムランの世界に引き込まれていきました。
いいですね~、ガムラン。神秘的な音色に癒されます。
モンゴル遊牧民のゲル(天幕)の内部。
フェルト覆われたゲルの内部は、入り口から入って中央に竃があり、台所のある右側が女性の座とされ、左側が男性の座とされるそうです。
ベッドやテーブル、チェストやドレッサー、戸棚やテレビなど、狭い空間ながら必要なものはすべて揃っていて機能的。
究極のミニマリストですね。
最近では太陽光パネルやパラボラアンテナも普及しているとのこと。
遊牧民のミニマルでエコロジカルな暮らし方、見習いたいものです。
インドの戦いの女神ドゥルガー。
ベンガル地方の雨期明けの女神祭礼では、村の広場などに臨時の祭壇を作り、そこに壮麗な女神像を祀ってお祝いし、祭りが終わると女神像は川や海に流されるそうです。
インドの神さまって、血肉に飢えた凶暴な感じがあって生命力と躍動感に満ちていて、楽しいですよね。インドに充満するエネルギーにも通じるものがあります。
日本のお祭りもなかなかの迫力。
こちらは熊本・八朔祭の仁王像。
牛鬼とは西日本に伝わる妖怪で、海岸に出現して毒を吐き、浜辺を歩く人間を襲うそうです。
伝承によって、頭が鬼で胴体が牛の場合と、頭が牛で胴体が鬼の場合があるとのこと。
『百怪図巻』など江戸時代の妖怪絵巻では、頭が牛で胴体が蜘蛛という土蜘蛛のような姿で描かれることが多いようです。
とくに宇和島・和霊神社の和霊大祭には各地から牛鬼がやってきて、その威勢を競い合うことで悪霊を祓うとされています。
大隅地方の秋祭りには、巨人伝説を背景とした巨大な人形が登場してきました。
今日では岩川八幡神社の「やごろどん」など数か所にそうしたお祭りが残っています。
人々は、巨大な「やごろどん」の姿に無病息災・悪疫退散の願いを託すそうです。
鹿踊(ししおどり)は岩手県・宮城県・山形県などに広く分布し、愛媛県の一部にも同系統の芸能が伝わっています。
遠野地方の鹿踊は、鹿の頭をつけた踊り手が何頭か組になって、太鼓に合わせ、身にまとった幕をひるがえして踊ります。
「しし」は野獣の総称。
鹿舞は芸能の系譜では、大神楽などの芸能の系譜とは異なる風流踊の系譜に属するそうです。
と、ここまでは大変興味深い展示の数々でとても楽しめたのですが、左翼イデオロギーの色合いが濃厚な展示もあったりして、これにはちょっと閉口しました。
たとえば、ヨーロッパに向かう難民(?)or移民(?)の方が持っていたリュックサックの展示とか。
移民が利用するエスニック店で売られているインスタントラーメンの展示とか。
かの有名なアイヌ産(?)の木彫りの熊の展示とか。
アイヌ人がつくった(?)ネクタイや財布の展示とか。
「これが国立の博物館の展示に値するものだろうか?」と首をかしげざるを得ません。
こういうイデオロギー色が強く政治的に偏向した展示品は残念でしたが、展示全般は興味深いものが多く、半日かけても観たりないくらい充実していてお勧めです。