2023年11月19日(日)
急に寒くなって冬に突入しそうなので、秋の名残りを惜しむべく、午後から奈良公園をひとり散策。
ちょっと落ち込むことがあったのですが、のんびり過ごす鹿さんたちに癒されました♪
訪日外国人がコロナ前超えになったとのことで、この日も観光客の6割以上は外国の方々でした。
中国語に韓国語、フランス語やスペイン語、ドイツ語など、いろんな国の言葉が飛び交っていて国際色豊か。京都に比べると奈良の観光公害はそこまで酷くないので、比較的ゆっくり楽しめます。
うれしいことに、この日は常設展の無料観覧日でした。
展示品の中には撮影可能なものもあったので、少しご紹介していきます。
吉野山にある金峯山寺の仁王門に安置される高さ5メートル以上の巨大な像です。
像内の銘文によって、南北朝時代の1338~1338年に南都大仏師・康成(こうじょう)によって制作されたことが判明しています。
あまりにも巨大なので引きで撮っても阿吽像2体を同画面で撮影できなかったので、一体ずつ撮影。
こちらは阿形像。
山のような量感と、みなぎるパワーに圧倒されます!
こちらは吽形像。
側面から見れば、肩・腕・胸の筋肉表現の素晴らしさがよく分かります。
見事なボディメイクですね。
血管の浮き出た足の甲や、力のこもった爪先など、細部まで行き届いた肉体表現。
仁王門に安置されていたら、こうした側面や足元までじっくり鑑賞できないので、貴重な機会でした。
疾走する姿から「走り大黒」とも呼ばれる伽藍神立像。
禅宗寺院を守る伽藍神で、修行をさぼる怠け者を懲らしめる役割を持つそうです。
この「走り大黒」が奈良マラソンのパンフレットに掲載されたこのから、一躍人気者になったとか(笑)。
日本以外の仏像の展示もあって、こちらは中国・唐時代(703~704年)の十一面観音菩薩立像(重文)。
女性的な顔立ちの観音像で、くびれたウエストをもつ優美なお姿をしています。
唐時代のものなのに、ふくよかな「唐美人」ではなく、現代の美意識と共通するようなプロポーションと顔立ちを持つ仏像。制作の背景が知りたくなりました。
(中国の仏像は文化大革命などで多くが破壊されたので、研究するのも難しいんですよね。自分たちの手で自分たちの文化を破壊するというのは、本当に恐ろしいことです。)
右手に持つ印章には「滅罪」という文字が刻まれており、罪深い人間を救済する観音さまだったことが分かります。
その洗練された姿は慶派仏師の手によるものと推察されますが、面白かったのは、毘沙門天の足元で踏みつけにされている二匹の邪鬼たちです。
肘をついた手に頭をのせ、毘沙門天をぎょろりと睨み返す邪鬼の表情がふてぶてしくて、ユーモラス。
彩色を施した目玉や筋肉もりもりの肉体表現など、邪鬼の姿が傑作で、良い味出しています。
トーハクに比べると奈良博は撮影可能な作品が少ないので、気に入ったものはほとんど撮影できなかったのですが、展示のなかで一番心惹かれたのが、秋篠寺の梵天立像(重文)でした。
秋篠寺といえば伎芸天が有名ですが、その伎芸天と同じく、梵天も頭部は脱活乾漆造で、体は鎌倉時代の寄木造の後補という、時代の異なる異素材の合体像。
伎芸天が女性的ならば、梵天は男性的な美青年。
じっと見つめられるとこちらが恥ずかしくなってくるような、凛々しく美しい仏さまです。
いつまでも観ていたくて、立ち去り難かったな……。
秋篠寺からはもう一体、救脱菩薩立像も委託展示されていました。
あと、今回は展示されていなかったのですが、奈良博でいちばん好きな仏像が、上の画像の天王寺華厳蔵院伝来の如意輪観音です。
鎌倉中期の仏像で、おそらく慶派仏師の作品と思われますが、ほんとうにお美しいですよね。
京博でもこれとよく似た(おそらく定慶作と思われる)如意輪観音を学生時代に観たことがあるのですが、あれ以来、お会いできないまま。
いつか再会できるといいな。