2023年11月19日(日)
奈良博を出たあとは、ならまちを歩いてみました。好きなんですよね、こういう風情ある古い町並み。
幕末から明治時代にかけて、ならまちに点在した町家をモデルに建てられた「ならまち格子の家」。
奈良の町屋を気軽に見学できる人気スポットです。
さっそく中に入ってみましょう♪
入口の土間から続くのは、表通りから奥庭まで通じる「通り庭」。
通り庭の上は、「火袋」と呼ばれる吹き抜けになっています。
京町家とよく似た作りですね。
通り庭の一角にあるのが「おくどさん(竃)」。
奈良盆地の冬は寒い。
冬は土間から冷気が伝わって足腰がさぞかし冷えただろうと、昔の女性たちの苦労がしのばれます。
通りに面した「店の間」。
格子越しに外光が差し込む空間です。
格子は、外から中が見えにくく、中から外が見えやすいハーフミラー的な役割を果たします。
「中の間」には、収納と階段を兼ねた「箱階段」がついていて機能的。
デザイン性にも優れていますね。
(箱階段って素敵ですよね。自宅にもほしい!)
階段を昇っていきましょう。
2階は屋根裏部屋のようですが、前後の虫籠窓から表通りと裏庭が見下ろせるようになっています。
天井には採光用の天窓もついていて、うまく作られていますね。
2階の部屋からは、先ほどの「通り庭」を眺められます。
(最近の注文住宅にも、2階から吹き抜け空間を見下ろす趣向がよく取り入れられていますね。)
2階の格子窓からは、母屋と離れをつなぐ中庭が見下ろせます。
階段を下りて再び1階へ。
「中の間」から「奥の間」へと進みます。
奥の間には床の間があり、障子を開けると中庭が鑑賞できます
夏には風が吹き抜けて、涼を呼ぶ設計です。
素敵な中庭の向こうには「離れ」が見えます。
「離れ」へは渡り廊下を渡っていくのですが、
渡り廊下の途中には手水鉢があり、その向かいには昔のトイレ(厠)がありました。
(ピンボケでごめんなさい💦)
こちらが厠です。じつにシンプルですね。
「離れ」の向こうには「奥庭」があり、そのさらに奥には「蔵」があります。
ほんとうに町家って、ウナギの寝床みたいに細長い空間なんですね。
「離れ」にも天窓が付いていて、間口が狭く奥行きの深い空間でも、昔の人がいかに通風と採光を重視して、工夫を凝らしていたのかがわかります。
奈良町家の醍醐味を堪能した「ならまち格子の家」見学でした。古民家好きにはおススメです♪
日も暮れかかってきたので、ならまちを急ぎ足で散策。
江戸時代後期(18世紀後半)の町屋「藤岡家住宅」。
当初は生薬類、幕末からは蝋燭や鬢付け油・お歯黒などの小間物類、昭和になって紙類などを商い、昭和30年代まで栄えた商家でした。
表構えは商家の特徴をよく示し、出入り口に「突上げ戸」、両脇の「ミセ」と「シモミセ」の二室の正面には上下に「蔀戸」と「ばったり床几」を構え、これらを開放して店を営んでいたそうです。
安政元年創業の砂糖屋さん。
和三盆や黒糖、こんぺいとう(奈良こんふぇいと)などが販売されています。
店構えも商品デザインもレトロで素敵ですね。
奈良の焼き物「赤膚焼」の工房です。
赤膚焼には興味あるので、今度ゆっくり時間がある時に立ち寄ってみようと思います。
明治から昭和にかけて奈良では蚊帳製造が主要産業だったそうです。
蚊帳づくりの中核の一つだった吉田蚊帳店舗の隣にある吉田家の住宅(明治時代)。
細い格子や長い虫籠窓など、すっきりと洗練された佇まいです。
吉田蚊帳で売られていた麻の蚊帳生地をつかったストールや暖簾、ふきんにも味わいがありました。
創業800年以上の老舗の薬局。
効き目の高い漢方を処方してもらえそうな雰囲気ですね。
京都の八坂界隈でもそうですが、ならまちでもほとんどの家の軒先に「くくり猿」が吊るされています。
古い街並みとともに、いい風情をかもしているんですよね。
「くくり猿(庚申信仰)」のことをもっと知りたくて、奈良町資料館を尋ねてみましたが、もう閉まっていました。
ここでは「くくり猿」のお守りが制作され、昔の生活民具や江戸時代の絵看板などが展示されているそうです。
他にも、ならまちには「奈良町からくりおもちゃ館」や「奈良町にぎわいの家」など町家空間で体験できる施設があります。
観てまわりたいお店もたくさんあるので、次回はもっと時間に余裕を持って訪れたいと思います。
ならまち散策の途中で、御霊神社にもお参りさせていただきました。
御祭神は、井上皇后、他戸親王、事代主を御本殿にお祭りしているとのことです。
不思議に思ったのは、御霊神社の狛犬の足に紐が巻き付けられていたこと。
調べてみると、これは「足止めの願掛け紐」といって、ならまちで江戸時代から伝わる願掛けの手法らしい。
家出人や悪所通いの足が止まりますようにという願いや、子供たちが神隠しにあわないようにするために、狛犬の足に紐を結んで「足止め祈願」をしたそうです。
近年では「好きな人と一緒にいられますように」とか「客足が遠のきませんように」などの願いも加わり、信仰を集めているそうです。
面白いですね。