『疫病2020』門田隆将

今年1月から5月初旬までのコロナ禍の経緯をたどった本書『疫病2020』は、この地球規模のパンデミックで露呈した日本の脆弱性・危機管理の欠如を、われわれの目の前に突きつけた。


著者の門田隆将氏は言う、「日本は、感染症と戦うための『何も』持っていなかった。そもそも感染症対策を担うべき厚労省に『情報』も、『心構え』も、『ノウハウ』も、『信念』も、本当に『何もなかった』のである」、と。

 

問題の本質は、日本では政府も官僚も、国家の安全保障として感染症問題をとらえようとしなかったことにある。

危機管理や安全保障に強いとされていた安倍政権だが、なぜ今回、これほどまでに危機意識が希薄だったのか?


その謎を解くカギとなるのが「安倍政権の変質」だ。


昨年以降、菅官房長官(当時)と安倍首相との間がぎくしゃし始め、その間隙を突くように、今井尚哉補佐官ら経産官僚が官邸を牛耳り、いわゆる「側近政治」がまかり通るようになった。

親中派の側近に囲まれた安倍総理のもとには、最前線で国民世論と向き合う自民党議員の声すら届かなくなり、中国全土からの入国禁止措置がなかなか採れなかったとされる。

側近官僚による“情報コントロール”の中に安倍首相は陥っていたようだと本書は指摘する。

 

コロナの脅威は今なお全世界で猛威を振るい、未来は闇の中である。

そうした状況のなか、危機管理の専門機関を一刻も早く立ち上げることが日本の最重要課題であろう。

経済、軍事、流通、医療、それぞれの専門化・専門機関が連携し、国家の危機に迅速かつ的確に対応できる専門機関が何としても必要だ。自衛隊自衛隊厚労省厚労省、政府は政府と、バラバラに動くのではなく、トップダウンですべてを仕切る強力な組織をつくらねばならない。

そして、そのためにはトップダウンの緊急事態対策を可能にする法整備、つまり憲法改正が必要となる。

今回これほどの犠牲が出て、これだけの経済的大打撃をこうむったことを無駄にしないためにも、この教訓を生かした危機管理・非常事態に強い国家づくりを国民レベルで後押ししたい。

 

門田氏は2月24日付のツイートでこう述べている。

「政府の今回の失策をどう今後に生かすか。そこに将来の鍵がある。平和を唱えていれば永遠に平和が続くと考えている政治家やメディアと決別し、自分たちの命を守る為にどう一票を行使し、SNSを通じてどんな情報を発信していくか。国民全体で危機意識のレベルを上げ、ドリーマーを脱したい。それが何より重要。」

 

疫病2020

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