『大阪都構想2.0』

いよいよ今週、大阪都構想2度目の住民投票が公示された。


私は大阪出身だが、2年前までは東京に住んでいたため、前回の住民投票はおろか橋下徹府市政時代すらほとんど知らない。

 大阪は橋下政治や維新によってどう変わったのか。


 その知識の穴を埋めるべく、これまでも『ポスト橋下の時代』(朝日新聞大阪社会部)、『大都市自治を問う 大阪・橋本市政の検証』(藤井聡ほか)、『大阪都構想が日本を破壊する』、『緊急検証 大阪市がなくなる』『大阪破産からの再生』(吉富有治)、『体制維新 大阪都』(橋下徹 堺屋太一)、『橋下「大阪維新」の嘘』『橋下「日本維新の会」の深い闇』『大阪市役所「闇」の系譜 橋下・大阪維新の会が継承したタカリ人脈』(一ノ宮美成+グループK21)、『国会という茶番劇 維新が拓く日本の新しい政治』(足立康史)など、維新の会や都構想についての関連書を読み漁ってきた。


そして今回、2度目の住民投票に合わせて出版された近刊本にも目を通してみた。


 まずは松浪ケンタ著『都構想2.0』の感想から。



 周知のとおり 5年前の都構想との大きな違いは、5特別区が4特別区になった点だ。


新体制への移行コストが、前回案では600億円とされていたが、今回は庁舎新設や貸借計画を見直すことで初期費用を241億円にまで圧縮。大阪府が毎年20億円の特別加算を10年間行うことにより、大阪市の実質的な負担がほぼゼロになった。

 また、大阪の特別区の取り分も、東京23区の取り分をはるかに上回るよう設計された。大阪の場合は東京よりも特別区の権限や財源割合が大きいという。


 少し気になるのが、特別区の庁舎に配置される職員数が現在よりも増加して、4区全体で1764人増員される点である。

 住民サービスの充実という点では職員数の増員は望ましいかもしれないが、これでは人件費が大幅にアップして、コスト高になるのではないだろうか?


この疑問をSNSで著者の松浪ケンタ氏と吉村知事に尋ねてみたが、いまのところ回答は得られていない。

 


 本書でとりわけ興味深かったのが、大阪都構想の根拠法となる「大都市法」の骨子作成に、菅義偉が深く関わっていたという記述である。大都市法の成立を強力にプッシュしたのが菅であり、大阪都構想はいわば菅義偉肝いりの政策ともいえる。


 森功『総理の影 菅義偉の正体』によると、そもそも橋下徹に政界入りを説得したのも、自民党選挙対策副委員長だった菅義偉だったし、菅はことあるごとに維新の会にエールを送り、橋下徹をバックアップしてきたとされる。

 


そんな菅が現在、この国の最高権力者となっている。

大阪を前に進めるには、今が絶好のチャンスであり、この機会を何としても掴みたい。都構想が可決されれば、国からの財政支援も含めた強力な後押しが期待できるはずだ。

 


巻末の対談で、吉村洋文知事は「都構想はあくまでも手段」だと語る。言うまでもなく、大阪都構想の究極の目的は、大阪を日本の副首都にすることである。

 


私自身、都構想には全面的に賛成できるわけでも、維新を手放しで信頼しているわけでもない。

だが、日本の防衛・防災・成長のためには、東京一極集中を是正し、東西二極でリスクヘッジをしながら、日本を経済的・政治的・社会的・文化的に牽引していくことが是が非でも必要だと思っている。


このまま何もせず現状に胡坐をかいていたら、日本も大阪も「座して死を待つ」になるやもしれぬ。

この国はそれくらいの危機感を持つべき時に来ているのだ。