2021年11月25日(木)
天龍寺の塔頭・宝厳院。ふだんは非公開ですが、春と秋だけ特別公開されます。
こちらの紅葉のライトアップは息をのむほど美しく、まちがいなくお勧めできる名園です。
宝厳院の庭園「獅子吼の庭」は、嵐山の景色を巧みに取り入れた借景回遊式庭園で、室町時代の禅僧・策彦周良(さくげんしゅうりょう)の作庭。
とても凝った作りになっていて、アミューズメントパークのように楽しめました。
「獅子吼」とは、釈迦の説法のようすを獅子が吼えるさまにたとえたもの。
庭園を散策し、鳥の声、風の音を聴くことによって、世の真理や正道を肌で感じる。
つまり、庭園をめぐることで「無言の説法」を感じ取ることができるようにつくられたのです。
夜の闇と、灯りに照らされた紅葉の微妙な色の違い。
こちらは黄色い紅葉。
黄金色に輝いていました。
庭園は「此岸」と「彼岸」とに分かれていて、両者のあいだには苦海(苦界)が広がっています。
苦海とは、この世が苦しいものであることを海にたとえた言葉で、この庭では黒い丸石を敷き詰めて表現されています。
写真手前には、こちら(此岸)から対岸(彼岸)へ今まさに渡ろうとしている生き物の姿(獣石)が見えます。
対岸の築山(須弥山)には、雲上三尊石(釈迦、文殊、普賢)が安置され、釈迦の説法を聞こうと、動物たち(十二支をあらわした獣石)が次々と苦海を渡ってきています。
三尊石の左隣で青いライトに照らされているのが、龍門瀑と鯉魚石。
上の写真が、登龍門(瀧を登り切った鯉が龍になるという故事)をあらわした「龍門瀑」と「鯉魚石」。
鯉が激流を登って龍になるという登龍門は、禅の修行の厳しさ・悟りの尊さをあらわしています。
お釈迦様を慕って三尊石のもとに集まる動物たち。
獣石は十二支を表現しているので、ネズミっぽい石や、ウサギや牛、馬(?)っぽい石も。
めっちゃ可愛い!😊
三尊石のアップ
写真手前に見えるのが「舟石」。
苦海を渡り切れない人のためにも、きちんと助け舟が用意されていて、「だれ一人取り残さない」仏の救いが示されています。
ランプもきれい。
四方をあまねく照らす仏の教えがあらわされているのかな?
しばらく紅葉をじっくり鑑賞していると、
本堂が見えてきました。
本堂は2008年に再興されたもので、堂内には本尊の十一面観音と33体の脇仏(観音菩薩)、足利尊氏が信仰したとされる地蔵菩薩が安置されています。
塔
こちらの「碧岩」は、2億年前の海底に堆積した微生物やプランクトンが圧縮されてできた岩石(チャート)で、大堰川上流、有栖川上流、龍安寺の山手より産出したもの。
パワーストーン・マニアも、この岩のパワーを授かりに巡礼するのだとか。
こちらは「獅子岩」の名の通り、右を向いた獅子にそっくり。
「獅子吼の庭」の守護神のごとく、庭園の真ん中に鎮座していました。
碧岩と同じチャートだそうです。
自然が生み出した赤、茜、紅。
銀杏の落葉も宝石みたい。
渡月橋に使われていた親柱。
ここを起点として、大堰川に見立てた小川が流れていました。
この水は、大堰川から取水しているそうです。
こちらは渡月橋に見立てた橋。
嵐山を借景にして、さらに庭園内に「ミニチュアの嵐山」を入れ子のように作っているんですね。
庭に水辺があると、有機的な動きが出て、趣きも増すように思います。
この庭園にはいろんな種類の垣が設えられていて、これも見どころの一つ。
こちらは竹の枝を集めて作った「竹枝穂垣」。
「豊丸垣」の「豊丸」とは茶人の名前で、藁で作った蓑に似ていることから「蓑垣」とも呼ばれるそう。
稲木にも似ていますね。
こちらは、耐久力を増すために垣に屋根をつけた宝厳院オリジナルの穂垣で「宝厳院垣」といいます。
グレードアップした雰囲気ですね。
宝厳院境内と入口付近にずらりと並んだ嵐山羅漢。
さまざまな地域の個人・企業が奉納したとのこと。
「五百羅漢を嵐山に建立することにより、人類の安心立命と嵐山の守護・景観保全を祈念し、有縁無縁の菩提を弔うもの」だそうです。
羅漢の姿や表情もじつにさまざま。
寄進した人々のいろんな思いが込められているんだろうなあ。
羅漢以外にも、ロマネスク彫刻のようなユニークな像もあって、見ているだけでも面白い。
夜間拝観はめちゃくちゃ寒かったのですが、なかに入るとあまりにもきれいで、夢中になって見ているうちに、あっという間に1時間以上が過ぎてしまいました。
帰りは嵐山の料亭や旅館の灯りを見ながら渡月橋を渡ったのですが、ああいう日本的な明かりって風情があって良いものですね。